妖精を知っていますか？名前くらいは知っているでしょう。じゃあ、見たことはありますか？ここで、はい、とこたえる人は少ないでしょう。かつて、当然のように妖精が住んでいると信じられていた国々があります。その国の、ケルト・アイリッシュの楽器の名前もしらないのに、奏でる音色にどこか懐かしさを感じるのは、何故なのでしょう？心躍るようなのは何故なのでしょうか？
そもそもケルトとはいったい何でしょうか？
かつて少女たちが妖精と戯れた幻のように遠く、霧の向こうでの御伽噺の国までは何mileあるでしょうか？まだ、彼の地はあるのだろうか・・・。
昔々、あるところに、小さなお姫様がおりました。
その名はセリドウェン。彼女の名付け親は、遠い遠い遠い親戚の、珊瑚の魔女、パラティーナ。
十二年前の今日、優しくも高名なる彼女がはるばる王宮まで駆けつけることになったのは、生まれたばかりのセリドウェンの心臓には致命的な欠陥があり、長くは生きられぬとお医者が断言したからでした。
パラティーナは彼女に名を与え、祝福を授けました。心臓の綻びは紅い魔法の糸で繕われ、姫は生命を繋ぎました。
そんな事実は知らぬまま、健やかに育ったセリドウェン。その心の宝石箱には、自身の名前の由来となった、伝説上の御伽の世界、《妖精郷》（ケルト）への憧れがいつの間にかきらきらと蓄えられてゆきました。
其れを知った優しい魔女は、今日この日、この名付け子の為に、《妖精郷》に所縁ある人々を募って昼下がりの御誕生日会（ティーパーティ）を催したのです。
演奏家、語り部、踊り子……もちろんたくさんの歌い手も。みな《妖精郷》への造詣深く、誠実な人々ばかり。姫の元気な姿を祝うため、世界中から集ってくれました。