大地は滅び、海は枯れ果て、空だけが無限に広がっている。
その中でただ一つ、天青石(セレスタイン)と呼ばれる不思議な石の力を借り、浮遊している巨大な樹が存在していた。
遠い昔、この世界で生きる人々は誰しもが翼を持ち、
大樹を止まり木として一面に広がる青の中で自由を謳歌していたという。
そして天青石は光を纏い、この世界に幸を与えていた。
しかしいつしか天青石はその輝きを失い、数多の人の背から翼は消えてしまった。
それから長い年月が経ち、今となっては僅かばかりの命が大樹に縋り、寄生する形で生き伸びている。
——何故、人は翼を失ったのか。
その理由をただ一人、空を見上げる少年は知っていた。
これは過ちを繰り返しながらも創世より続く誰かの物語。
けして語られることのない歴史の頁が今、めくられる。